書籍
工藤保則著 『中高生の社会化とネットワーク』 2010.2.28 ミネルヴァ書房
著者は私の 落語の導師でもあり、関西の社会学者のホープ。
一見、コナモンとは無関係な学術書です。
が、子供たちが社会化するという 10歳前後は、お友達といろんなことを作り出す年頃で、
家での誕生会ひとつとっても、ただプレゼント交換して、ゲームしてケーキを食べ て・・では満足しなくなっている年頃だと思います。
この世代に、タコパー、オコパーは有効なお楽しみ。おススメです!
私も、小学生の頃、いろんなお誕生会を経験しましたが、
自分でおにぎりを作るおにぎりパーティや、もちろんタコパーの思い出が楽しい記憶としてよみがえります。
この本には、あえて「引きこもり」と いう言葉は登場していません。
でも近年増加の一途である自殺の問題以上に、「引きこもり」は深刻な現象です。
社会の病理である「引きこも り」も、当事者の10歳前後の社会化がカギだと思われます。
ゲーム時代にはいって久しいですが、「ゲームで遊ぶ」から「ゲームを遊ぶ」ことが果たせなかった子供たち。
その過渡期をクリアできない子供たちへの警鐘として、この本は重要な問いかけをしていると思います。
『質的調査の方法』 2010.2.5 法律文化社
新入社員研修の季節、新聞記者やテレビ関係者の取材や情報の集め方の研修はどのくらいなされているのか、疑問に感じています。
・某メディ ア局の番組で、インターネットによる女性限定アンケートを取ったというコーナーがあるが、ネットアンケートで、女性限定といっても、意味がないことを わかっていない。母数も明らかにしていない、などあまりにも初歩的な勘違いがまかりとおっている。
・某新聞から焼きそばの歴史をたずねられて、 「断定できないが、少なくとも明治維新後、西洋料理がはいってから以降のことです」と答えたコメントに対し、「坂本龍馬も食べた焼きそば?」という見出し をつけて返されたこと。明治維新=坂本龍馬という安直なキーワードが担当記者に刷り込まれている現実。
こんなことが多数あり、取材者としてのいろは、基礎教養以前の、マナー、礼儀、話し方にいたるまで、社会人として目に余る事例が多いのです。
取材する者は、対象となる人、事象から、「材(ネタ)を取る」以上、それを正しく、誠実に伝えるという最低限の義務があることを、世間の取材者は置き忘れています。
この優秀なテキストは、社会学を修める大学生向けなんですが、ジャーナリスト新人研修にも必読の書として、注目されるべき「取材者心得の入門書」だと思います。